君がいる街
「じゃあ、自己紹介どぞー。」
その基哉の声に、彼女が頷いて。真っ直ぐ、クラス全員を見据えた。
覚えて、いるのだろうか?
彼女は、俺のこと。
心臓がぎゅっと引き締められるこの感覚は、生まれて初めて体験するモノで。
昨日の基哉の言葉の続きが、急に頭を占めた。
『分かんねーの?お前はさ、』
「桜月、碧斗(おうつき、あおと)です。」
『惚れたんだよ、その女に。』
「それなりの毎日が送れれば、それでいいです。」
『まぁ、せいぜい頑張りな。』
「宜しく、お願いします。」
ペコリと頭を下げた彼女が、また前を向いた瞬間。
目が、合った。