君がいる街
それぞれが、それぞれの、
人生において、衝撃的な瞬間はそう多くやって来るモノではない。
ただ、時々重なったりはするけど。
「ん、基哉の手帳?」
基哉はもう学校に行ってしまっているこの時間。・・・確か、朝会議だとかなんとか言ってた気がする。
見つけたのは、机の上に無造作に置かれた分厚い黒い手帳。
「アイツ・・・これないと困るんじゃね?」
無意識に出た言葉に、我ながらなんて人がいいんだと思わず自嘲した。どうでもいいのに。アイツが困ることなんて。
「・・・ん?」
やっぱり置いていこうか。そんな思いが胸を占めた時。不意に、何かがはみ出てるのに気がついた。何だ、書類か?
とっさにそれを掴んで、引っ張り出す。その正体を理解した時、目を丸くした。
「姉貴・・・・?」
それは、姉貴がにっこり笑った。
一枚の、写真だった。