君がいる街
まさか、もう俺の名前を覚えてくれていたなんて。思わずニヤケそうになる頬を必死に我慢して、席へと座る。
圭が、人見知りするタイプじゃなくて本当に良かった。
「蔵之助くんも、転校して来たんだよね?」
「え、あ、うん。」
後ろから聞こえた声に振り向けば、身を乗り出して興味津々といった様子の彼女がいた。
思ってたより、子供っぽい顔をしてる。
「碧ちゃん。蔵之助じゃ長いでしょ!蔵でいいから、蔵で!」
「あ、そうなの?」
圭のその言葉に、桜月が目を丸くする。
つか、圭。お前、人の名前捕まえて、長いってなんだよ。そしてなんだよ、その投げやりな感じ。
文句を言おうと口を開けた瞬間。
「蔵っ!」
とびきりの笑顔で俺の名前を呼んだ彼女に。あろうことか、
赤面してしまった。