君がいる街
いや。いやいやいやいや。何時ものことじゃん、こんなの。女子にだって、普通に蔵って呼ばれてんじゃん。
なのに、何なんだよ。
この異常なまでの心拍数は。
固まった俺に、桜月が首を傾げる。やばい、やばいよ。何を言えばいいのか、何を話せばいいのか、全然分からない。
こんなのおかしい。俺じゃない。
まるで、自分を誰かに乗っ取られたかの様なこの感覚。意を決して口を開ければ、あの低い低温が耳に入ってきた。
「碧斗。ちょっと来い。」
俺たち3人。視線を向けた先。
済ました顔の、沖島がいた。