君がいる街
正直、俺はこれまで他人のことなんか気にしたことなんかなかった。
だけど、この感じはどこか凄く懐かしいもので。
今まで頬杖をついていた手を外して、よくよく覗き込む。少し曇った窓ガラスから見える、校庭。
今は、春。桜の花びらが舞い散る中で、靡く黒髪。
その長い髪を束ねることもなく、彼女はただ頬を桜の木の幹に寄せていた。
初めて見る、女の子。
その光景が、まるで写真の様で。そこだけが、緩やかに時が流れていて。
頬を寄せる彼女が、儚く消えてしまいそうで。
そして、綺麗で。
俺は思わず、息を呑んだ。
授業終了のチャイムと共に、駆け出した足。行き先は勿論。
彼女の元。