君がいる街
なかったのか・・・?
どうして?圭に渡した時には、確かにあった筈だ。
眉を寄せ、そこまで考えた時、はっとした。
動揺を隠すように、基哉から顔を逸らす。
「し、知らねーよ。挟んでたんなら、手帳にあるだろ。」
「ねーんだよ。・・・落としたのか。」
基哉の切な気なその声が、頭に響いて。
それと同時に、圭のあの張り付けた様な笑顔が、頭に浮かんだ。
『それぞれが、それぞれの、』
(気持ちと願いを持っていて。)
(ソレらが一直線になんて、なりはしないんだ。)
想い人が持っていた女の写真なんて。
圭は、辛くないのだろうか?