君がいる街






「っ、あ。」





言葉が、出ない。開いた口は、ただパクパクと閉じたり開いたりするだけで。



俺たち2人だけを包むこの空気が、やっぱりさっき感じたあの感覚と同じだったから。なんとなく、切なくなって。



そっと意を決した様に彼女を見れば、俺を見つめていた彼女が、優しく笑った。




「好きなの?」


「え?」





「桜。」






そう言って、微笑んだ彼女は。



何故だか、泣きそうだった。








『君は、転校生』






(ここまで切なく笑う女の子を)
(今まで、見たことなかったから。)





好きだよ。と一言呟けば、君はとても嬉しそうに笑った。


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