インスタントラブ~甘くて切ない一目惚れの恋~
咄嗟に振り返ったが、
そのときのひかりの顔は
よくわからなかった。



ただ見えただけ。



脱衣所のさらに奥の
廊下の明かりを背に
浮かんでた。



その
なにからなにまで細い
肢体のライン。



シルエット。



それだけがやけに
印象的だった。



「べつにぃ、いいけど、暗くね?」



「星月夜みたいなんで、しばらくすれば目が慣れてきますよ」



たしかに外に面した擦りガラスの窓はほんのり明るかった。



しかし、
せめて体を洗い終わってからにしてほしい。



恥ずかしいから
そうしたのはわかるけど、

これじゃあ、
いくらなんでも
洗いにくい。



どうしようか困ってると、
ひかりが
自分のタオルを
石鹸で素早く泡立たせ、

おもむろに
あたしの背中を洗いはじめた。



「いいよ~」



遠慮した。


病人じゃないんだから
背中くらい自分で洗える。
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