私があなたに恋した理由
甘い空間
ダンダンダン……
今日もちゃんと聞こえる。
私は体育館へ急いだ。
今日はいつもより5分も遅れてしまった。
はやくしなきゃ!皆来ちゃう!!
シュパッ
あ…ナイシュー。
誰もいない朝練前の体育館、1人でシューティングをしてるのは
私の大好きな1つ下の後輩くん。
ちょうど1年前私が2年生の時。
隣の男バスに入部してきた1年生。
皆すごくかわいかった。
わざわざ女バスにも挨拶しにきてくれた子まで。
そんな中女バスなんか興味なさそうに、1人でシューティングを始めた奴がいた。
名前も知らない1年生。
すごく気になった私は、彼を目で追い続けた。
綺麗なシュートフォーム。
かたいディフェンス。
早すぎるドリブル
文句なしの判断。
回転がかった強いパス。
完全に彼にハマッてしまったみたい。
ほとんど笑わないクールな彼の
試合中見せる喜んだ笑顔が頭から離れない。
引退しちゃったけど、毎日こうやって
1人で練習する彼をこっそり見にきていた。
ゴールだけを見つめる彼は、きっと
私なんかに気付いてもいないだろうな…
少しでも同じ空間いたくて
毎日欠かさずここを訪れる。
いつか…いつか気付いてほしいから。
まだ少しだけ肌寒い
春の風が私の横を通りすぎた。
今日は戻ろうかな…
これ以上見てると切ないから。
いつもより少し早めに体育館を出ようと思った私。
「え…?」
彼が私の手を掴んでいた。
何がなんだかわからなくて。
ただ、わかるのは
心臓がいつもより早くて
体が熱くなっていること。
「先輩、もう帰っちゃうんですか?」
――まさかの展開。
*
甘い空間