私があなたに恋した理由
届かない距離



すっかり暗くなっちゃったな…と、
空を見ると星が夜空に浮かんでいた。
風が赤く染まった葉っぱを散らしていく
今日は一段と寒い。
私は上着のファスナーを1番上まであげて歩き出した。



「う〜〜寒っ」



前から風が強くあたって寒い。
薄着…間違ったな。
なんて思いながら歩くスピードを速める。

あ!今日は火曜日だ。



「お〜今日も塾帰り?」



大好きな大好きな優しい声とともに
自転車のベルが鳴る。



「はい、先輩はバイト帰りですよね?」



うん、そうだよ。と言いながら自転車を押してくれる先輩に笑顔を返した。


火曜日の午後8時すぎこの道で必ず会える先輩は私の片想いの相手。
この時間だけのために私はいつも遠回りをする。
わざわざこんなことまでしてバカみたいだって皆には言われるけど、
これしかないんだから仕方ない。
素敵な彼女がいる先輩に少しでも近づける唯一の方法だから。



「薄着で寒くない?」

「いえ、大丈夫です」

「俺の着ていーよ」



そう言って先輩は自分の上着を私に渡した。
そして
ごめん、片手しか使えないから
って自転車のハンドルを持つ左手を指さした。



「でも、悪いですよ」



私はそんな先輩の仕草にドキッとしたとゆうことに気付かれないように慌てて言う。
いーのいーの。ってのんきに笑う先輩を見て
その優しさがずるいんですよ。
って心の中で呟いた。


届かない声と叶わない想いは
はかなく夜空に消えた。

冬がもう目の前まで迫って来てる
秋の終わりのある日の出来事。






届かない距離


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