告白[短編集]
綾と手をつなぎながら下におりると、父さんが帰って、みんなテーブルについていた。


「お帰りなさい」


父さんにあいさつをして、綾と席に座る。


「綾さん、少し話しがあるんですが、食事の前と後どうしますか?」


痴漢の事か。


「今でいいです。」


「わかりました。
では書斎へ「ここでいいです。」


父さんの言葉をさえぎる綾。


「みんなの前でいいです。」


真っ直ぐに、父さんの目を見る綾。


すごいよ綾。


あんなに震えて泣いていたのに。


「それでお願いがあるんですが、私名前とか知りたくありません。」


「知りたくないんですか?」


「はい、もし聞いてしまったら、私一生名前忘れないと思います。
そんなの嫌なんです。」


うん、そうだね。


綾の言う通り。


俺も嫌だ。


あいつの名前を、綾が覚えるなんて。


一生覚えてるなんて。


考えただけでも、嫌だ、許せない。


俺は隣の綾の手を、テーブルの下でギュッと握った。
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