お前のためなら死んでやる
オーナーの知樹さんに、別れの挨拶をして店を出る。
このバイトを始めたのは知樹さんがあたしを勧誘したから。
あたしが純とカラオケに行った時、部屋から漏れたあたしの歌声を気に入ったそう。
知樹さんが経営するber.tomokiは、シックな雰囲気で落ち着いた軽装。
置いてあるピアノであたしより5歳年上の知樹さんの妻、晴菜さんが演奏をする。
客足も少いわけではない。
常連が通う回数が多い。
あたしはこの混まない感じが好き。
音楽の優しい雰囲気に包まれながら、少し漂うお酒の香りがあたしの寂しさを和らげてくれる。