お前のためなら死んでやる
ガサッ
桜咲が寝返りをうった音であたしは現実に戻った。
目が点になった。
桜咲の長い襟足の髪が、寝返りと共に首筋から流れた。
脂肪なんかなさそうな、キュッとした首。
そこにあった、
―――――ほくろ
まさかね、そんなはずあるわけない。
首筋に黒子なんてある男の子なんてこの世に沢山いるだろう。
あたしは、桜咲が嫌い。
あの泣き虫な男の子が、
総長と呼ばれる桜咲のはずがない。
それでも、手は勝手に首に触れようと動いていた。
筋肉が浮き出た首筋は、少しゴツっとしていたけど、なんだから温かかった。
きっと寝ている間に体温が上がったのだろう。
それともあたしの指が冷たいだけ?
なでるように触れていると、
「なに触ってんのー?くすぐったい。」
「えっあの別に触ってなんか…」
起きてた。恥ずかしい。