お前のためなら死んでやる

「泣かないで、あたしが側にいるから。あたしがあんたの側にいるから、実の兄を恨まないで…」

泣かないで、君に涙は似合わない。

「情けねぇ、何俺感情的になってんだろ。しかも泣いてるし。てか、お前もう帰れ。今日は見逃すからよ、忘れてくれよ。なんかお前見てると憎めねぇや。」

そう彼は自嘲しながらあたしに背をむけた。

あたしはそんな彼が小さく見えて…鏡に映るあたしを見てるようで、守りたいと思えた。

「帰らない。あたし帰らない。あんた1人置いて帰れない。あたしあんたの側いる。いいでしょ?あんたの女にしてよ。あたし桜咲の女じゃないけど、あたしを奪いたいんでしょ?あたしを奪ってよ。あたしを…」

ぎゅっ。

「馬鹿な事言うなよ。それ奪うじゃねぇじゃん。頼まれ事じゃん。でも、お前が欲しいよ。俺お前が欲しい。俺の側にいろよ。」

振り向いた彼はあたしを強く抱き締め、あたしの唇を奪った。

今は好きとか分からない。

でも、あたしは彼の側にいる。

桜咲の弟と名乗る彼を守りたい。
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