ピーちゃんと私
「バファリンどこ?」というのが小学生の頃の私の口癖で、体が特に弱かったわけではないのだが、頭痛持ちで頭が痛いことが多かった。
「また頭が痛いの? 一回病院に行ってちゃんと検査した方がいいかもね」と母がいつも心配してくれたが、私は病院が嫌いで、大丈夫だよと言いつつもバファリンがそばにないと不安になり「バファリンどこ」が口癖のようになってしまっていた。

 離島に住んでいる祖母は一人暮しで、祖父は私が物心ついた時にはもう亡くなっていた。だからってわけではないが、私は毎年夏休みになると一月丸々祖母の家で生活をしていた。前の年までは母と一緒だったが、この年は私一人で行くことになった。
「本当に彩ちゃん一人で大丈夫?」と、祖母の家まで送ってくれた母が心配そうな顔で訊ねる。
「うん」
「なんかあったらすぐ電話するんだよ」
「うん」
 横で祖母がニコニコしている。
「お婆ちゃん、迷惑だったら言ってね。すぐ迎えに来るから」
 そう言って母は帰っていった。
 私の家は沖縄の今帰仁村(なきじんそん)という所で祖母の離島までは意外と近い。母はそれでも心配そうだったが、婆ちゃんも寂しいだろうということで「一人で行く!」という私の我が侭を許してくれた。
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