Ne soyez pas desespere

兄さんにつれられて入ったのは県内でも大きめの有名な県庁第1ホールだった。


中はかなり盛況だ。そんなに有名なピアニストなのかな…?


「プログラムをどうぞ」


入り口でチケットを切ってもらい、プログラムをもらった。


席について手渡されたプログラムの、『ピアニストのプロフィール』を見る。


だがそこにはただ名前しか載っていなかった。



『神田瑠璃 ーかんだるりー』


神田瑠璃…?


どっかで聞いたような名前だなぁ……。


まぁ、そんなに有名なら聞いたことあってもおかしくない。



しばらくして拍手とともに楽屋から舞台に現れたのはドレスをまとった細身の少女だった。



可愛いとは思うけど…この人がピアニスト??



どう見ても中学生ぐらいにしか見えないんだが……。



舞台慣れしている、という感じの美しい所作で礼をして、椅子に腰掛け、一呼吸置いて鍵盤に手を乗せる。



そして、そのまま…1秒…2秒…3秒…4秒…5秒…………20秒…30秒……


あれ…?


動きが止まっている。



……どうしたんだろう?と不思議に思った瞬間。



重厚な和音が会場に響き渡った。


そして息を継ぐ間もなく、連続して奏でられるポロポロとした細かい連続音。


プログラムをちらっと見ると、


『ショパン・エチュードハ短調Op.10-12「革命」』


と書いてあった。


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