Ne soyez pas desespere

ぱたぱた、と言う音がだんだん近づいてきて、リビングのドアがガチャンと開けられる。


「あ、祐、いたんだ!…えーっと、裕の友達?いらっしゃい!」


この人が、裕の従姉?!


「あー…。来る予定って朝じゃなかったっけ?」


「え、あはは…」


「忘れてたの?」


「ううん、彼氏とデート!」


彼氏、いるのか?!


「……あのさぁ……」


「ま、いいじゃん!はじめまして。あたしは裕の従姉にあたる神田瑠璃。これからも裕をよろしくお願いしますね」


はじめまして、じゃないだろ…。


あ、でもこの人からしてみれば、俺なんて観客の1人でしかなかったのか…。



「こちらこそよろしくお願いします…。あの、いきなり失礼ですが、ピアニストやっていらっしゃいますよね?」


「あ、うん!知っててくれて嬉しい!」


やっぱり……あの人!


「俺、昨日のコンサート行ったんです!すごく感動しました」


「ホントに?!ありがとう!!」


「あれ、瑠璃さんって昨日もコンサートだったの??」


「祐、酷い!」


「だってこっちに帰ってくるのは今日って聞いたし。昨日はまだ音大で練習してたんじゃないの?」


「おい祐、お前新聞ちゃんと読んでないだろ!」


「えー?なんで総知ってるの?!」


「昨日の朝刊、書いてあったぞ?…『若き天才ピアニスト神田瑠璃、県庁第1ホールでコンサート』って」


「…マジか…」


「あはは…天才ではないけどね…」
< 7 / 11 >

この作品をシェア

pagetop