Ne soyez pas desespere
ぱたぱた、と言う音がだんだん近づいてきて、リビングのドアがガチャンと開けられる。
「あ、祐、いたんだ!…えーっと、裕の友達?いらっしゃい!」
この人が、裕の従姉?!
「あー…。来る予定って朝じゃなかったっけ?」
「え、あはは…」
「忘れてたの?」
「ううん、彼氏とデート!」
彼氏、いるのか?!
「……あのさぁ……」
「ま、いいじゃん!はじめまして。あたしは裕の従姉にあたる神田瑠璃。これからも裕をよろしくお願いしますね」
はじめまして、じゃないだろ…。
あ、でもこの人からしてみれば、俺なんて観客の1人でしかなかったのか…。
「こちらこそよろしくお願いします…。あの、いきなり失礼ですが、ピアニストやっていらっしゃいますよね?」
「あ、うん!知っててくれて嬉しい!」
やっぱり……あの人!
「俺、昨日のコンサート行ったんです!すごく感動しました」
「ホントに?!ありがとう!!」
「あれ、瑠璃さんって昨日もコンサートだったの??」
「祐、酷い!」
「だってこっちに帰ってくるのは今日って聞いたし。昨日はまだ音大で練習してたんじゃないの?」
「おい祐、お前新聞ちゃんと読んでないだろ!」
「えー?なんで総知ってるの?!」
「昨日の朝刊、書いてあったぞ?…『若き天才ピアニスト神田瑠璃、県庁第1ホールでコンサート』って」
「…マジか…」
「あはは…天才ではないけどね…」