永遠の愛



中に入ると、余りの狭さに唖然とした。



沢山のライブハウスを見てきたが、ここまで狭いハコは初めてだった。







だが、その歌手。。。。。。


彼女の姿を目にすると、そんなことは、どうでもよくなった。





…アリゾナ沙羅?





彼女は、ステージの上で歌っていた。




Vivienne Westwoodの黒のブラウスに、黒いバッスルスカート、それに赤いロッキン・ホース・バレリーナと言う出で立ちで、


全く、感情的な歌い方ではないのに、心に強くしがみつくかのように
不思議な雰囲気を持っていた。




彼女は、OLIVIAのWinter sleepとTell meを歌い上げ、誰とも目を合わせることもなく、

「Thank you」

とだけ言い、舞台袖に行ってしまった。



観客も拍手だけし、感想を言うでもなく、帰り支度を始めていた。



僕は、冷静になると、最前列まで来ていたことに気がついた。


自覚はないが、さっきまで食い入るように観ていたのだろう、柵にしがみついていたせいで、ライブ後、お決まりの鉄の匂いがした。



周りの観客達は、たしかに、50人はいるものの、壁にもたれて観るもの、用意されている、椅子に座っている者が殆どだろう。


彼らは、20代後半から40代くらいまでの年齢層で、僕くらいの年齢は、1人としていなかった。




この年齢層なら、少しくらいは、バレないだろうと思い、ビールを頼んだ。


スタッフは、未成年じゃないのか?と疑わしく見ながらも、

特に問うこともなく、ビールをくれた。





僕は、自分でも信じられないくらいにハイになっていた。
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