紅ノ刹那
緋焔が見つめていることを感じ取り、死刑囚は―――いや、彼女は振り返った。
フワリと宙を舞う、長い黒髪。
肌はまるで雪の様な白さを保ち、唇は艶やか。
特に目を惹くのは、その瞳。
長い睫はクルリと上を向き、
綺麗なアーモンド型の瞳は、血を垂らしたかの様に紅い。
凄絶な美貌を誇るその姿は、
まさに傾国の美女。
彼女にかかれば、
その両手を戒める枷と鎖でさえも、美しい腕輪の様に見えてしまう。
彼女は緋焔に近づくと、
そっと腰を折った。
完璧な、淑女の礼。
「砂夜(サヤ)と申します」