紅ノ刹那
「あのさ、敬語、やめてくれないか?」
沈黙を破ったその内容に、砂夜は首を傾げた。
「何故?
あなたは王となるのでしょう」
もっともな問いに、緋焔は顔をしかめる。
「………理由なんてない」
「そうですか」
明らかに何かありそうな表情であり声色であったが、
興味はないとでも言うように
砂夜はただ頷いた。
「なあ、お前はなんで死刑囚になったんだ?」
気まずそうに、またも緋焔が問いかける。
「お前には関係ない」
「なんだ、その口調」
「お前が敬語をやめろと言ったのだろう。
私は従っているだけ。
………もういいか?
私は寝る」
そう言って、さっさと寝てしまう始末。
緋焔はその態度が癇に障った。
もともと王太子で、今まで緋焔にそんな口をきいたのは醒燕だけだった。
舌打ちをして、緋焔も苛立ちを抱えたまま横になった。
こういう時には、さっさと寝てしまった方がいい。