紅ノ刹那
「ちくしょう。
なんで俺が………」
「まあまあ」
いじける緋焔を、醒燕は苦笑と共に宥めた。
キッと睨みつける緋焔。
「お前はいいよな!!
行かなくていいんだから!!」
「そりゃあ、王の試練だぜ?
一介の護衛が行けるわけないだろう」
刺々しい言葉をものともせず、醒燕は楽しげに言った。
あの後、大臣のもとへ行き
説明を受けた二人は、聞かされていなかった多くの事実を知った。
曰わく、
一、試練を乗り越えねば王にはなれない
二、王位継承者ただ一人で臨まなければならない
三、生贄を連れていかねばならない
との事だ。
「大体、なんだよ生贄って!!」
「このご時世に珍しいモンだよな~。
初めて俺は聞いたぞ」
呑気な醒燕に、緋焔は噛みつかんばかりの勢いで言う。
「俺がその生贄を火山の中心部のマグマに突き落とすんだぞ!?
おかしいだろ!!
次代の王を人殺しにするつもりかよ!?」
「まぁまぁ。
生贄っていっても死刑囚だろ?
問題ないさ」
「俺のメンタル面が問題ありすぎなんだよ!!」
もっともだった。