紅ノ刹那


「ちくしょう。
なんで俺が………」


「まあまあ」


いじける緋焔を、醒燕は苦笑と共に宥めた。


キッと睨みつける緋焔。


「お前はいいよな!!
行かなくていいんだから!!」


「そりゃあ、王の試練だぜ?
一介の護衛が行けるわけないだろう」


刺々しい言葉をものともせず、醒燕は楽しげに言った。


あの後、大臣のもとへ行き
説明を受けた二人は、聞かされていなかった多くの事実を知った。



曰わく、
一、試練を乗り越えねば王にはなれない
二、王位継承者ただ一人で臨まなければならない
三、生贄を連れていかねばならない



との事だ。




「大体、なんだよ生贄って!!」

「このご時世に珍しいモンだよな~。
初めて俺は聞いたぞ」


呑気な醒燕に、緋焔は噛みつかんばかりの勢いで言う。


「俺がその生贄を火山の中心部のマグマに突き落とすんだぞ!?
おかしいだろ!!
次代の王を人殺しにするつもりかよ!?」


「まぁまぁ。
生贄っていっても死刑囚だろ?
問題ないさ」


「俺のメンタル面が問題ありすぎなんだよ!!」


もっともだった。



< 5 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop