紅ノ刹那
死刑囚はそっと祭壇から降りると、緋焔に近づいた。
緋焔も、後ろの醒燕も、それを息を詰めて見守る。
緋焔と死刑囚、二人の距離が
手を伸ばせば触れられる程まで近づくと、死刑囚は立ち止まる。
そして、そのフードの奥から
ジッと緋焔を見つめた。
「……………」
「……………」
「……………」
「………なんだ?」
互いに沈黙が続く中、とうとう我慢できずに緋焔が口を開いた。
「…………」
だが死刑囚は依然として何も語らず、ただ黙って緋焔に自らの手を戒める鎖を手渡した。
どうやら、持って歩け
という意味のようだ。
緋焔は鎖を受け取った。
思いの外長いらしく、余裕がある。
華奢な鎖は途中で二本に分かれ、それぞれの手首の枷に繋がっている様だった。
「あのさあ」
緋焔が死刑囚をしげしげと眺めていると。
滲み出る好奇心を抑えきれなかったのか、醒燕が死刑囚に話しかけた。
死刑囚が醒燕を見る。
「アンタ名前は?
あと、顔見てみたいんだけど」