紅ノ刹那


「……………」


依然として黙ったままのその人物は、突然クルリと緋焔を振り返った。


再び、ジッと見つめる。


(何故俺を見る!?)


「顔を見せてもいいか、殿下の許可を求めているのでは?」


司祭が助け船をだしてくれた。


「……そうなのか?」


試しに聞いてみると、コクリと頷く。


「いいぞ、顔見せて。
ついでに、喋ってくれると助かる」


そう言うと、死刑囚はまたコクリと頷き、今度は醒燕の方を振り返った。






(なんだ、なかなか可愛いヤツじゃないか)



などと緋焔が呑気に思っていると。


シャラリ、
と再び音がして、続いて醒燕が息をのむ気配が伝わってきた。



(なんだ?
そんなに不細工なのかよ)



そう思って、死刑囚を何の気なしに見た、その瞬間。




緋焔の全身に、ゾクリと粟肌が立った。



恐怖にではない。

その人物の、美しさに。



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