-Super Natural-
朔夜の言いたいことは、なんかよくわかる。
「『生半可な思いや覚悟で星に行っても、欠片は見つからない。それどころか、星に行くことさえできない』
そう言いたいんでしょ?」
なぜかは知らないけど、口が勝手に動いて、そう言った。
「…やはり、まだほんの少しの自我は残っているのですね…」
朔夜が、私にですら聞こえないような声で呟いた。
「え?」
「いえ、何でもありません。
あなたの仰られる通りです。
さあ、どうしますか?」
また問い掛けられた。
でももうすでに、私の心は決まっていた。
「…星に行く。記憶の欠片を探しに。」
朔夜は反応を示さないが、私はそのまま続けた。
「あなたの仰られる通りです、ってあなたは言ったけど、私はそうは思わない。
昔からの私を知ってるあなたなら、私がこう言うことは、分かっていた筈でしょう?
…私は、旅に出る。
覚悟とか何とかは置いといて、私の失った大切なものを、取り戻すために。」
(結構ペラペラ喋れるんだな、私)
自分で自分に感心しながら、朔夜の答えを待つ。
朔夜は、少しの間のあと、一度俯いていた顔をあげ、私に言った。
「…では、我が主君よ。
この私に、命令をください。
私にできる最良のことを、この私に、ご命じください」
そう言われた瞬間、少し悩んだ。
昔の私をよく知っていて、理由はどうあれ、私に使えてくれていたらしい人、朔夜。
一人の人間の人生を、この後の私の一言で、無茶苦茶にしてしまうかもしれない。
そう思った。
でも、そう思うのと同時に、こうも思った。
私が彼と一緒なら、彼に何かしてあげられるかも知れない。
だから、私は、
「私に着いてきてください、朔夜。
私には、あなたの助けが必要です。
…いいですか?」
私を見る朔夜の目を見て、そう言った。
答えを聞くのが、少し怖かった。
すると朔夜は、また俯いて、優しく、こう言った。
「イエス、ユア・ハイネス」
新しい旅が、始まる。