月の恋人


「…み、見たくて、見た訳じゃねーよ!!」



嘘だ。


抱き合う二人を見て

“陽菜が、奪われる”


その瞬間が
ついにやって来たって思ったら


目が、離せなかったんだ。





―――…精一杯の強がり。



震えそうな拳を握って
半身を起こした俺に

怒ったのかと思ってた翔が

突然、笑いはじめた。



「あっはははははは!!」








…………あん?






俺を見下ろす格好の翔は
おかしくて仕方ない、とでも言いたそうに口を押さえて肩を震わせている。






――…バカにしてんのか?





「ぶっ。ゴメン、って。」

俺があからさまにムッとしたのが分かったんだろう、笑いを噛み締めながら謝ってるが……








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