月の恋人
「…なにカッコつけてんの、お前。…陽菜ちゃんなら、昨日、もう泣かせちゃったもんねー。」
ペロッと舌を出して軽く返した翔の言葉に、
ドカン、と来てしまった俺は
まだまだ
修行が足りないんだろうと思う。
「…んだと、テメー…」
分かってんだけど、
止めらんねーのは仕方がない。
「陽菜に、何したんだよ。」
あいつが泣くなんて
よっぽどの事がない限り…
「……そんなの、教える訳ないだろ。…でも、陽菜ちゃんの泣き顔って、妙に色気があってソソるよね、…癖になりそう。」
このヤロ…
「…あんなノーテンキな女、泣かしてんじゃねーよ!!」
陽菜を泣かす奴は、誰であろうが、許さない。
昔からの、俺の信条だ。
前言撤回。
バレた以上、俺は、闘う。
「…陽菜は………渡さねーからな!!!」
自分でもまさかの宣戦布告。
渡すも渡さないも
俺のものですら、ないのに。