月の恋人
小学校の高学年になると
翔くんは
めきめき、大きくなっていった。
背が伸びて
肩幅が広くなって
手足がぐんぐんおっきくなって
あたしは、ひとり
置いてきぼりにされた気がした。
その頃から
翔くんは
あたしより、一つ下のあたしの弟とよく話すようになっていった。
半年に一度の旅行は
相変わらずで
行き先も
変わらず信州だったけど
翔くんの隣は
あたしじゃなくて
あたしの弟で
翔くんが握るのは
あたしの手じゃなくて
携帯ゲーム機に
変わっていった。