月の恋人
…〜〜♪♪〜〜…♪〜♪…〜
(あれ?)
リビングから廊下に出ると、2階から何か音楽らしきものが聴こえてくるのに気付いた。
(…誰もいないはずなのに?)
何とはなしにふと玄関に目をやると、見慣れたスニーカーが脱ぎ捨ててある。
………涼?
土と芝生に薄く汚れたその履物は
間違いなく、涼のものだ。
「なんだぁ、涼、帰ってきてるんじゃない。」
あたしは独り言を呟きながら、2階の涼の部屋に向かった。
玄関には、涼の靴しかない。
…ってことは、涼は帰宅したけど翔くんはまだ、という事だ。
行方を、確かめなければ。