月の恋人
「キャッチボールで、疲れたかな?」
涼の頬っぺたをつっついてみる。
柔らかい、あどけない寝顔。
ふふ、かわいい。
こうして見てると、昔と変わらない感じがするのにな。
柔らかい、けど…
(…ん?……)
涼をつっついた指の先に、何だか違和感。
(…粉っぽい?……)
なんだか、ほのかに甘い香りもするような…
粉の正体を確かめようと、涼の頬に顔を近付けた、その時だった。
「…っ…きゃっ…………」
視界が、ぐるんと回転する。
目に映るのは、白い天井。
身体を覆うのは、涼の身体。
「…んー……………なー…」
耳元で聞こえるのは、涼の寝言だった。
「…ちょ……っと…涼、重いっ!」
「……にゃー………」
寝ぼけて
ぬいぐるみか何かと間違えてるのか
あたしは涼にしっかりと抱えこまれてしまっていた。