月の恋人
―――――――…
ほんとうに
それは 一瞬の、出来事で。
後から思い出そうにも
あまりに事実が大き過ぎて
あたしは
動物的な本能で
くちびるが感じた快感しか
覚えて、いない。
―――――――――……
「……ん…っ……」
抱えこんだ涼の腕から
身体半分、掠め取られたような格好で
あたしは、翔くんに
キスを、されていた。
目の前にある状況が、よく理解できない。
ただ、わかるのは
押し当てられてる
翔くんの、柔らかい、唇。
「………しょー……く、んっ…」
――…やだよ…やめて。
あたし………
息が苦しくて
おかしく、なりそう…