月の恋人




それは


子供の頃、交わした

かわいらしいキスじゃなくて



お互いの唇から生まれる


濡れた音が

ひどく卑猥な感じのする



甘い、大人の、キスだった。



「……………ゃだ…っ…」




(こんなの、知らない…)





今まで感じた事のない

唇の感触。




このまま続いたら

底無しの沼に、
堕ちてしまう気がした。




「……しょうくん、や…めて…」



荒い息の間から、やっとお願いをする。



頭がクラクラして

何が何だかもう分からない。



翔くんの目が
濡れて、甘く揺らめく。




「…陽菜ちゃんの…唇、甘くて……美味しい…もっと、ちょーだい?」




「……っ……」


息苦しさと
くすぐったさと
恥ずかしさとで


どうにかなってしまいそうだった、あたしの背後で



沈黙を保っていた
涼という名の火山が

文字通り、噴火した。





「……勝手なことばっか、してんじゃねー!!!」











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