月の恋人
瞬間、
涼の背中から
大音量のオーケストラが噴き出した。
「うわっっ!!!」
「きゃぁっ!!!」
翔くんが
咄嗟に、守るようにあたしを抱きすくめる。
「な、なにっ!?」
ジャンジャン鳴り響くシンバル
涼の怒りをそのまま形にしたような
高く高く、うねるバイオリン
家中に響き渡る
マグマのようなシンフォニー。
演奏はまさに最高潮、
クライマックスだ。
涼が起き上がった瞬間、ヘッドフォンのコードが抜けてしまったらしい。
(マズイ………)
ハッと階下を気にした時には、もう遅くて。
「コラーーー!!!!!何やってんの、あんたたち!!!!!」
シンバルの音にも負けない
ママの怒号が
桜木家に
華やかに撒き散らされたのだった。
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