月の恋人



瞬間、

涼の背中から
大音量のオーケストラが噴き出した。



「うわっっ!!!」
「きゃぁっ!!!」




翔くんが

咄嗟に、守るようにあたしを抱きすくめる。






「な、なにっ!?」





ジャンジャン鳴り響くシンバル

涼の怒りをそのまま形にしたような
高く高く、うねるバイオリン


家中に響き渡る
マグマのようなシンフォニー。

演奏はまさに最高潮、
クライマックスだ。






涼が起き上がった瞬間、ヘッドフォンのコードが抜けてしまったらしい。





(マズイ………)




ハッと階下を気にした時には、もう遅くて。




「コラーーー!!!!!何やってんの、あんたたち!!!!!」




シンバルの音にも負けない

ママの怒号が



桜木家に

華やかに撒き散らされたのだった。




――――――――――――――――――――――――――………










< 130 / 451 >

この作品をシェア

pagetop