月の恋人
―――思えば
数日前から、その予兆はあったのかもしれない。
でも、初めての事だらけのあたしは、そのサインに気付けるはずもなくて
翔くんのことで
ドキドキしたり
ハラハラしたり
ずっとそんな風だったから、情緒不安定なのかと思ってた―――……
お風呂から上がって
鏡の前に立った途端、キーン…と耳鳴りがした。
途端に
視界が、隅から黒く霞んでいく。
「…あ……」
まるで船に乗った時みたいに
足元がぐらんぐらんして
耳が聴こえなくなって
それから、目が見えなくなって――――……
―――バタン
あたしは、堪らず、洗面所の床に倒れてしまった。