月の恋人
ゲーセンの窓から
一瞬だけ見えた陽菜の姿。
間違える訳がない。
他の奴らだったら間違えるかもしれないが
俺の目が陽菜だと認識したら
それは100%、陽菜だ。
―――…なんで、こんなとこにいんだよ。
ここいら一帯は
ハッキリ言って柄が悪い。
俺だってゲーセン(ココ)までは来るけど、その先は足を踏み入れないように注意している。
その先……つまり
さっき陽菜が走っていった方だ。
―――…なに、やってんだよ…
あいつが走る事なんて滅多にないのに
珍しく、真っすぐ前を見つめて走っていた。
まるで、何かを追いかけるように。
「アキ、ワリぃ。俺、ちょっと抜けるわ。」
「は!?オイ、ちょっ…………」
アキが何か叫んでいたような気がしたが
俺の耳には、
まるで入ってこなかった――…