月の恋人



「…………翔、くん……」


あたしの声だけが

その空間で

やけに浮いて 聴こえた。


自分が、ひどく場違いな気がした。




翔くんがこっちを見て
一瞬、大きく目を見張る。




「………………陽菜ちゃん?」



その一瞬の隙に

翔くんに手を掴まれていた彼女は
その場から逃げるように、去って行った。


「………あっ、ちょっ……」


バタン、と
虚しく、扉の閉まる音だけが響く。





その暗い地下には


翔くん

あたしを連れ込んだ大男

さっきから一言も喋らない、モジャモジャの髪をした不気味な男

おじいさん

そして… あたしの5人が残された。









< 178 / 451 >

この作品をシェア

pagetop