月の恋人
――――… バカだ。
暗い路地を走りながら
込み上げる涙が止まらなかった。
あたし、多分、ちょっと自惚れてた。
あのキスを、誤解してた。
翔くんにとって
あたしはただの従姉妹なのに
……あんなキスをするから
もしかして、翔くんもあたしのこと… って、心のどこかで、ちょっと期待してたんだ。
今日、それを見事に打ち砕かれた。
―――…ヒドイよ、翔くん。
あんなに周りが呆れるくらい
想ってる彼女がいるのに
どうして
あたしにあんな事したの?
すごく、惨めな気分。
惨めで、恥ずかしくて、
何処かへ消えてしまいたかった。