月の恋人


サバンナで、ライオンに襲われる象の子供のように


巨大な敵を前にすると
為す術なく
こんなにも身体が竦むのか。



足が、ガクガクする。



「………すけて…」


背中を、壁に押し付けられる。


「イイカラ、ヤッテミナヨ」



口を無理矢理、開かれそうになる。


「………ぃやーーーっ!!!!!!」





――絶体、絶命


迫ってくる男の顔にギュっと目を潰った

その、ときだった。







―――――…



「陽菜ーーーっ!!」




―――…耳に届いた、救いの声。



「…陽…テメ、この野郎っ!!!!!」



狭い路地を駆け上がってきた、見慣れた顔。

小さい頃からずっと
あたしのピンチを救ってくれた、弟の涼だった。










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