月の恋人




「…………っあ…」



口が動かない。
息もうまく吸えていない。




――…


全身の筋肉が強張って
身体の自由が、全く利かなかった。






「……陽菜。」

震える身体を
ギュッと大きく包まれる。


頬に、涼の髪が触れる。



「…………りょ…う…」


「もう…大丈夫だから。」



そう言いながら
繰り返し
あたしの背中を優しく撫でる涼の手を感じるうちに

少しずつ、
助かったんだという実感が湧いてきた。






―――… 涼。






涼の背に手を回したら、途端に嗚咽が込み上げてきた。




「うぅ………っ………」



――…そのまま

あたしは
涼の腕の中で泣き崩れた。










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