月の恋人




「……陽菜…」



「…っ……ど、して…?……」



――…涼が、ここにいるの?

と、続けたかったのに
しゃくりが邪魔をして、うまく言葉にならなかった。





「……アキとゲーセンにいたら、陽菜が走ってくのが見えたんだよ。…っ…危ない場所だって知らなかったのか?…なんで、こんなとこまで……」



――…“なんで”って…


それは……―――




「…………っ…」




翔くんの顔が浮かぶ。

鹿島さんを追いかけていった後ろ姿も。





―――――――…嫌だ





………なんだろう



おかしい。

呼吸が、苦しい。
ちゃんと息を吸っているのに。





「……何があった?」





――――…



『あぁ、やっと見付けた!的な?』


『あれからしばらく、寝ても覚めても鹿島さんの話題だったもんな…』




―――… 嫌!!




「……は…っ……」


「陽菜!?」


「…っ……く、るしぃ…っ……」



「オイっ…」



―――…イヤだよ

――…もう、あたしに現実を見せないで。



呼吸の乱れと共に

急速に手足が痺れて、感覚が無くなっていく。

真夏なのに
指先がキン、と冷たい。



息が、上手くできない。

しゃくりあげるのが止まらなくて

眩暈がして


酸素が足りているのか、いないのかすら、判断がつかなかった。

ただただ、苦しかった。





「…どー………しよっ……涼っ…」


怖くて、涼にしがみつく。




――…頭が、クラクラする


どうしたら、これを止められるのか

どうしていいのか、

パニックで、全然わからなかった。










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