月の恋人
「おいっ!陽菜っ!!」
「…ごめっ……っ…涼……」
ヒクヒクっ、と
喉が乾いた音を鳴らした。
――…苦しい
――…誰か、どうにかして
もはや自立していられない状態の身体が、ずるずると地面に倒れていく。
「イキナリ、どうしたんだよ!?」
「……い、きがっ……くっ……るしぃっ…」
自由にならない呼吸が
苦しくて、苦しくて
胸を掻きむしりたいような衝動に駆られる。
ハッ、とか
ヒュウッとかいう
不規則な呼吸音が、あたりに響いていた。
「………これ………過呼吸?」
「………っ、…え?……」
上から、涼があたしを抱えるように覆いかぶさってきて
耳元で囁いた…ような気がした。
「………………ゴメン、陽菜、ちょっと我慢して。」
……気付いたら、
あたしの口は、温かいもので塞がれていた。