月の恋人



それは、まるで
救命救急員のような正確さで

涼は、ひたすら、ポンプ役に徹してあたしに空気を送り続けてくれた。





――――――…不思議だ。



この子はどうして
あたしが一番必要なものを
すんなりと理解して
即座に与えてくれるんだろう。




ほら


涼が中和してくれたお陰で

あたしの身体は
平静さを取り戻しつつある。




気付いたら、
横隔膜の痙攣(ケイレン)も治まっていた。



奇跡のような、時間だった。






―――…




「……っ…はあっ……………」



ドサリ、と音を立てて
涼が地面へ横たわる。

おそらく、新鮮な空気を求めてだろう。

胸が激しく上下していた。










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