月の恋人
「………………………」
一瞬の沈黙。
「みっ………」
「見てないぞっ!」
――…何もハモらなくても良いのに。
姉弟だなぁ。
「お前の貧弱な裸なんか、見てもしょーがないし!」
「みっ…見てもいないのに、どーして分かるのよ…」
「あ、ヤベ。」
「……もぉーーっ!涼のエッチ!!」
「オイっ!そこで暴れんなって!!」
涼の肩をバンバン叩いてやった。
……恥ずかしいとは思ったけど
別に、本気で怒った訳じゃないんだ。
ただ――…なんとなく
涼に触りたかっただけ。
突っ掛かりたかった、だけ。
おんぶされている大きな背中が
無性に暖かくて
あたしは、文句を言いながら
思いきり、涼に甘えていた。