月の恋人
表情のない顔に、思わず、悪寒が背中を走る。
「………あ……ごめん…なさ…」
思わず出た謝罪の言葉を遮って
「ねえ。優しく、して欲しいの?…… 俺に?」
そう言いながら、涼は、あたしの顎に手を添えて頬を強く掴んだ。
強引に、引き寄せられる。
「…痛っ……なに、する…」
「………それとも、翔に?」
そのまま、涼の親指はあたしの唇をなぞる。
さっきとは違う感覚が、背中を抜けていった。
――――… いけない。
脳の中で、警告音が鳴る。
――――… 涼を、とめなきゃ
「な…に、言って……」
「まだ、わかんないの?」
涼との距離が―――ゼロになる…
「もう、うんざり。」
その言葉を最後に
あたしは、
無音の世界へ……落とされた。