月の恋人
唇を重ねた瞬間、
涼の目に表情が戻ったのを見た。
決して、良い色ではなかったけれど。
怒りとも、哀しみとも
その、どちらとも言えない
複雑な、色を帯びて―…
「……イイ加減、“弟”も、うんざり」
「………どういう…意味?」
――… 頭がぐるぐる回る。
熱のせいじゃなくて。
回転の悪い歯車を必死で働かせて
現実のピースを拾い集めなければ。
目前に広がる難局に
どう、対処すればいいのか
考えなければ……。
あたしの悪あがきを嘲笑うように
涼は
あたしを強く抱きしめて
とびきりの、爆弾を落としていった。
「…… 陽菜が、好きだ 。」