月の恋人





リビングに静かに響いた、その言葉を最後に―…涼は、あたしの前から姿を消した。





唐突に。

突然に。



奇襲のような、告白だった。







「――… 涼…」




玄関を出て行く涼の足音を遠くに聞きながら


あたしは、呆然として
身体を起こす事が出来なかった。






『陽菜が、好きだ』






生まれて初めての告白は、弟からでした、なんて……センスのない冗談としか思えない。



けど

嫌な訳じゃ、全くなかった。






その時、あたしに去来していたのは…


“切なさ”――…


たぶん、圧倒的に、それだった。









◆◆◆






夏の嵐は、いつも突然やって来る。

雷雲を、伴って。











あたしが


翔くんの失踪を知ったのは



この、すぐ後の事だった――…










【ミッシング:終】








< 227 / 451 >

この作品をシェア

pagetop