月の恋人
リビングに静かに響いた、その言葉を最後に―…涼は、あたしの前から姿を消した。
唐突に。
突然に。
奇襲のような、告白だった。
「――… 涼…」
玄関を出て行く涼の足音を遠くに聞きながら
あたしは、呆然として
身体を起こす事が出来なかった。
『陽菜が、好きだ』
生まれて初めての告白は、弟からでした、なんて……センスのない冗談としか思えない。
けど
嫌な訳じゃ、全くなかった。
その時、あたしに去来していたのは…
“切なさ”――…
たぶん、圧倒的に、それだった。
◆◆◆
夏の嵐は、いつも突然やって来る。
雷雲を、伴って。
あたしが
翔くんの失踪を知ったのは
この、すぐ後の事だった――…
【ミッシング:終】