月の恋人




ゆるゆると、あてもなく立ち上がったら軽く眩暈(メマイ)がした。



「……あ」



タイミング悪く、遠くから雨音が聞こえてくる。




<雷が鳴ったら、雨が来る>



その時のあたしは、そんな事も気付けなかった。





――――… マズイ


慌てて庭を見ると、干された服たちが、続々と濡れてその色を変えていた。



「大変っ……」


急いで外へ出て、洗濯ものを取り込む。



はじめは軽く肌に触るような雨だったのに、水の粒は次第に大きくなり、やがてすぐ、叩きつけるような豪雨になっていった。



ザァッ、という雨の音の後ろで
リビングの電話が鳴っていたような気がしたけど、気にしてる余裕はなかった。







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