月の恋人
でも、バカなことではなかった。
総合して考えて、どう解釈しても、そういう事だった。
あたしは昨夜、倒れるようにして眠ってしまったから、翔くんが帰宅したかどうかなんて知らない。
今朝も、熱にうなされていたから、翔くんがいたかどうかなんて、分からない。
もし、翔くんが行方を眩ましたと言うのなら
昨日、あのネオン街で別れたのが、最後だ。
そこまで考えて、ハッとした。
さっき、洗濯物を干しているときに感じた違和感――…
あの中に、翔くんの衣類は、一枚も…なかったんだ。
昨日帰ったなら、Tシャツなり下着なり、何かあるはずなのに。
間違い、ない。
翔くんは、昨日から、帰宅していない。
――― でも、どうして…?
翔くんが、うちに帰れない理由なんて、無いはずなのに――…
“理由なんて、無いはず”
そう、思う、けど…
でも―――…
あたしは、翔くんの何を知ってるというのだろう。
プライベートの事なんて、全然知らないのに。