月の恋人
◆
さすがに、この天気ではお客さんもいないのか
夜にも関わらずネオン街は閑散としていた。
時間が経つにつれ、真っ直ぐ歩くのが精一杯なくらい、雨と風は勢いを増してきていて、あたしの足元は既にグショグショだ。
「レインブーツ、履いてこれば良かった…」
歩いても
歩いても
翔くんがいた、あの地下への通路が、見つからなかった。
どこの角を曲がっても似たような路地と看板が連なっていて、迷路に迷い込んだような気分になる。
あの場所は、本当にあったのかな…
そんな疑問さえ湧いてくる。
――… 『もう、ひとりで、あんなとこ行くなよ』
昼間の涼の言葉が頭をかすめた。