月の恋人
その子の名前そのものの
陽だまりのような温もりが
唯一の、安らぎだった。
――――…
◆
「1番」「トップ」「No.1」
これが、うちの――桜木悟を家長とする桜木家の、家訓である。
「2番であることに何の意味もない」
それが、親父の口癖だ。
うちは、本家ではない。
親父が次男だからだ。
本家は長男である信司(シンジ)おじさん
…つまり、陽菜ちゃんのお父さんが会社と共に継いでいる。
次男だからだろうか。
親父は、昔から
「2番であること」を異常に嫌い
「何でも1番」と俺に繰り返した。