月の恋人
元来、出来が良かったのか
それとも4月生まれの得分なのか
悪いことに、俺は大した努力をしなくても
勉強も、運動も、大概のことは
うまくこなせてしまった。
――…簡単に手に入るものに子供が執着しないのは、至極当然のことだと思う。
興味を引かれるのは、
むしろ“手に入らない”ものの方なのに。
親は、完全に戦略を間違えたと言っていい。
「いいか、トップをとれ」
成長するにつれ、彼らは俺に期待をかけた。
“Go to the top.”
その「トップ」とは、一体何を指すのだろう。
そこには、何があるのだろう。
学内テストで。全国模試で。
「1位」に喜ぶ両親の顔を見るたびに、違和感を覚えた。
それが、何故そんなに嬉しいのか
全然、理解できなかったんだ。